指揮者、ブルーノ・ワルターの5回目です。
1956年に一旦、現役活動からの引退を宣言しますが、1957年には親交の深かった大指揮者トスカニーニの追悼コンサート、心臓病も克服し1960年に師マーラー生誕100年コンサートをニューヨーク、ウィーンで相次いで開催しました。
そして1962年アメリカのカリフォルニア州の自宅で心不全のため死去しますが、その後、その遺体は生前、ブルーノ、ワルターがナチス・ドイツから逃れて移り住んだスイスのルガーノに改めて埋葬されました。
ブルーノ・ワルターの指揮はモーツァルトの交響曲に見られるように、微笑むような至福に満ちた演奏でよく知られるところですが、同時に揺れるヨーロッパの只中でのベートーベンの交響曲第7番や、マーラーの交響曲第9番にみられるような心を揺さぶるような激しい演奏もありました。
ブルーノ・ワルターの指揮は彼の優しく、寛容な人柄と、理不尽な差別に対する強い怒り、そして彼とともにあって、助力してくれた人々への感謝に基づくものでした。彼の音楽の持つ力は激動の時代の中を人間らしく生きた人々への強い共感であり、今日においてもその輝きは増すばかりです。
次回はブルーノ・ワルターが得意としたモーツァルトのお話です。どうぞお楽しみに。