独立音楽家 -モーツァルトのお話 10 -
解雇されるや、ウィーンのペーター広場に構えるアウグ・ゴッテス(神の国)館に陣取ります。
実はこの3階で愛しきアロイジオ・ヴェーバーの母親(当時未夫人)が3人の嫁入り前の娘と男性専用の下宿屋を営んでいました。
当然のことながら、父・レオポルトは下宿を移るように指示します。
近所の下宿屋に転居はしますが、もちろんモーツァルトは勝手知ったるヴェーバーの家に通いつめ、毎晩のように夕食を共にし、自慢話に花を咲かせます。
実際、ウィーンでのモーツァルトの仕事は意外にも順調でした。
モーツァルトはこれまでの王国や大貴族達をパトロンに持って、生活の安定を図り、依頼された仕事をこなしていくという従来の音楽家のスタイルをいやおうなく投げ捨てるところから、始めざるを得ませんでした。
モーツァルトは、権力者からの庇護を受けずに自由な立場で仕事を請け負う独立した音楽家となりました。
すると、モーツァルトの名声を頼って様々な仕事が息も切らさず、舞い込む有様で、目標の一つであったオペラは作曲できるし、若き皇帝ヨーゼフⅡ世に目をかけて頂けるし、弟子も、パトロンも増えるしと一気に本領を発揮しはじめました。