光と影  -モーツァルトのお話 9 -

 ザルツブルクへの不本意な旅の途中、モーツァルトはマンハイムで恋に落ちた未だ未練のあるアロイジオ・ヴェーバーに結婚を申し出、ザルツブルクでの新婚生活を画策しますが、ものの見事に断られ、大失恋を体験します。

 

もはや、世間の荒波に奔労され、人生の苦しみ、悩み、悲しみを嫌というほど体験したことはモーツァルトの人間性に陰りを与え、美しく深みのある音楽を形づくる転機となっていきます。

 

忸怩たる想いで帰還したザルツブルクでしたが、モーツァルトに待っていたのは、大司教コロレドとの決定的対立と永久解雇でした。

 

これが世に名高いウィーンの「ドイツ騎士団の家」事件です。(1781年6月)

2人の性格と立場の違いからすれば、予想された結末ではありましたが、もはや、モーツァルトも

25歳、5月頃から事の結末を予期して準備をすすめていました。

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