レクイエム -モーツァルトのお話 15 -

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もはやモーツァルトはこの『レクイエム』が自分の為のものだと考えるようになっていました。

『魔笛』をやっと書き上げ、自らが初演した後、11月20日ついにベッドに倒れ込んだまま、起きられなくなりました。

もはや、自らの力では『レクイエム』の完成は不可能と悟り、弟子のジェスロイヤーに作曲の指示を与えて、ようやくにして完成させます。

 

12月4日には親しい人を集めて、曲の一部をモーツァルト本人が歌って試演を行いますが、感極まって途中で号泣したまま最後まで歌えない程でした。

 

夜を過ぎたころ病状が急変、翌5日の未明には還らぬ人となります。

わずか35歳10ヶ月の生涯でした。

 

 

モーツァルトの生涯は、彼の創り出した作品が同時代を生きた人々に完全に理解できない輝きを持つが故に、本来彼が受けるべき評価を充分にえることのない報われないものだったとも思えますが、彼が残した作品の数々は、どれもかけがえのないものばかりで、現代に生きる私達の、あるときは糧となり、あるときは生活の彩りとなる、人類普遍の宝物となりました。

モーツァルトの愛すべき人柄と、その素晴らしい作品はこれからも人々の心の中で永遠の生命を得て、長く生き続けることでしょう。

 

 

次回からモーツァルトと同郷のザルツブルク出身で、モーツァルトをこよなく愛した指揮者・ヘルベルト・フォン・カラヤンのお話をしたいと思います。

ご期待ください。