『魔笛』  -モーツァルトのお話 14 -

 

不思議なもので『魔笛』に導かれるように7月から急な注文で2つも仕事が入ってきました。一つがレオポルトⅡ世の「ボヘミア王」載冠を祝う祝典オペラで『魔笛』の作曲を一時中断して作曲に挑んだのが『皇帝ティートの慈悲』でした。この大作をわずか7週間で完成させ、プラハにおもむき、自ら指揮するというあわただしさでした。

 

もう一つの依頼は実に謎めいたものでした。

なにしろ、依頼主が不明にもかかわらず、大金を着手金として、全く見ず知らずの代理人が頼みに来たのでした。

しかも、仕事を引き受けるや、その灰色の服をまとった長身の男はさっさと帰ってしまい、

とりつく暇もありません。

 

そして依頼を受けたのは『レクイエム』でした。これも『魔笛』の作曲と併行しての作曲となりました。

モーツァルトはこの作曲を始めると、きまって心が乱れ、不吉な予感と、寒気、めまい、吐き気などいいようもない不安と焦りを感じるのでした。

にもかかわらず、作曲をやめるどころが、ペンが勝手に動くかのように作曲自体は続けられたのでした。

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